そらる

長い坂道 – そらる

軽口で笑いあった切ないほどの心地よさよ
こんな麗らかな退屈がかけがえない宝物だった

飽きるほど繰り返した ありきたりでありふれた日も
今日は僕らの旅立ちの日
魔法はとけるんだね

泥だらけの君を見て諦めない強さを学んだ
傷だらけの手に触れて人の愛し方を学んだ

舞い散る桜は次の旅を祝うように
笑顔作る強がりな君を輝く冠で飾っていく
たおやかな風が春を連れて微笑みかけた
青く澄んだ寂寞の空へ 涙拭きとるように頬を撫でていく

古ぼけた窓を覗き 出会いの日に思い馳せた
ついこないだのことのような とても昔のことのような

いつも待ちわびたチャイムが今日はこんなに鳴らないでほしい
落書きを重ねたこの本を閉じたくない

貴方に出会って本当の恋の意味を知った
貴方に恋をして胸を刺すような幸せを知った

差し込む夕日は寂しい背中を押すように
名残惜しみ巣立てない君の赤く腫れた瞼を隠した
見慣れた街はほんの少し心配そうに
長く続く道乗りの先をそっと見守るように照らし出す

たくさん得た分だけ失う悲しみだってあるけれど
この痛みは幸せの証だから全て抱えて歩いていこう

長い坂道が今日はこんなに嬉しいんだ
君と歩く最後の帰り道に少しだけ長くいられるから

この思い出は涙とともに仕舞って進もう
道を分かつ旅路の先で 胸を張り君とまた笑って会えるように

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