さだまさし

私の小さな歌 – さだまさし

美しい港町で生まれた
夜景は煌めく銀河のようだった
魚市場の向かいの三角屋根の駅の
隣に名画座があった
辛い時は古いシネマのように
幸せな日は甘い名画のように
私という名のとても小さな歌は
黄砂の町で生まれた
生きることは難しく 痛みと悲しみを連れて
迷い道辿り辿りながら ひたすら歌って生きた
嫌われたり愛されたり 傷ついたりまた傷つけたり
でも私は一度も誰も恨まなかった
それだけが小さな誇り

喜びや悲しみの時いつも
私は小さな歌を紡いだ
50年もの長い間に
いいものなんて無かったけど
心だけは込めた
あなたがふと私の歌を
そっと口ずさんでくれたときに
私の切なくて遠い道は
ようやく許された気がした
故郷は遠ざかる そしてあなたが故郷になる
誰かのために歌うことが
幸せだとやっと気づいた
もう少しだけ歌おう 小さな歌で良いから
未来へ届く歌を尋ね尋ねて
明日も生きようと思う

小さな人生など無く 小さないのちなんて無い
いのちは全てが美しくて
いのちは全てが愛しい
あなたに許されたなら 私は私を許そうと思う
私はあなたに愛されて生きた
それだけは大きな誇り

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