結城佑莉

  • 春海月 – 結城佑莉

    ふわり この瞬間を時間さえも抜け出してただ美しく揺蕩うだろうそして あの約束を思い出すのも忘れて海月みたいな雲みたいだな僕も、あなたも 水平線に連れて行って霞がかった 微睡みの中あなたのことを考えている 何か忘れてしまったようだ大事なような 他愛ないような初めからないような 低気圧が無数の願いを吸い上げては遠くに飛ばす抱き締めてもいずれどこかへ消えてゆくもの ふわり この瞬間を時間さえも抜け出して…

  • スイートピー – 結城佑莉

    たぶん何処かで出会っていたんだろうそのくらい嫌に腑に落ちる夏 グラスはとうに 水滴を帯びて誰よりも先に汗をかいている でもあなたも負けてない 夏になると焦って路傍に咲いたスイートピーまだ間に合うよって誇らしげ猫かぶって 化けて藪に消えないで ハニーせめて足跡は残していけ その手 掴んであなたに出会えてよかったと言いたいのに そっぽ向いている 世紀の大冒険 なんてクソ食らえ並なものが嫌に腑に落ちる夏…

  • ライカ – 結城佑莉

    思い出すのはいつも濁った笑顔ばかり強がりは強さだと言っていたな 颯爽と船に乗り込んだあなたは宇宙へと旅立ちました 電波塔の影に乗りあなたに繋いでみえた言葉の奥の奥の方に雑音が消えない本当だけを探していた誰も彼も知らずいたならばこんな星とはもうおさらばさ 水金地火木土天海冥ひとりぼっちのあなたを銀河の果てまで連れ回してみたい幽かに煌めく救難信号いちばん大切なことをさあ、言葉にしてみようぜ今度こそ 誰…

  • ごくらくとんぼ – 結城佑莉

    しばらく続いた雨が止んだ知らないうちに紫陽花がぜんぶ落ちたあたし少し悲しくなりましたがあなたと別々になる時もたぶんこんな感じなのかもしれないなそんなことをふと思いました 七月初旬 鈍色の雲路地を撫ぜる空洞な音たぶんこの風は青銅でできている 愛ひとつ解らないんだあの日から月は逆さまなんだだから仕方ないじゃないか 涙も流れないようににらめっこでもしていようぜひっつくほど近くであなたを睨めつけたい拘った…

  • 浮かぶように – 結城佑莉

    巡り合い 相対したが運の尽き口を開けば綺麗事の君が言う雲に描いたみたいな 未来さえいつか本当に浮かぶように ひとつも間違っちゃいないなんかそんな気がしている大した理由を求めるには一生は短いだろう 地べたに寝転がった空が大半になった低気圧に降り分離した水泡に君が写る 右手には傘を左手に心臓を 巡り合い 相対したが運の尽き口を開けば綺麗事の君が言う雲に描いたみたいな 未来さえいつか本当に浮かぶように …

  • いつか花になる – 結城佑莉

    ひとつだけ 君にだけ伝えたいことがある ひとつだけ 君にだけ伝えたいことがあるそのために 僕は言葉を尽くすだろう間違いも 正解もいつか花になるのだろうだからいまあなたは美しいんだと 長すぎる影と河原を歩いたギリギリの太陽が指を差す方へ いつか総てこの街は跡形もなくガラクタへと変わるでしょうたとえ声にならなくていいんだ歌になってしまえそして僕らの終わりは錆びた花ひとつ その色が分かるまでその如雨露で…

  • 渦 – 結城佑莉

    午前八時 環状線を少し外れ逃避行同じことさ あなたがいないだけ 紅色の宝石 塵になった成層圏目を廻してわたしは渦のなか 手を伸べる まだ遠くて 阿呆に見えるあなただけ 裏切られてもいいと思えた手を伸べる ことさえも 見えなくなるわたしは未だに渦のなか 正しさは相対なんだ 行方もなくてあなたが欠けた 日々さえ飲み干して爛れた胸の奥 攪拌して 攪拌してわたしはいつか あなたをこの鈍い空のひとつに 変え…

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