大石まどか
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身代わり心中 – 大石まどか
好いちゃならない義理ある女(ひと)に惚れて故郷を追われたあんたつらい世間になぶられながらこの世をすねた女があたしあゝ寒さしのぎに抱かれたけれどあんたのその瞳(め)にほだされて馬鹿を承知の身代わり心中引き受けました! 引き受けました!! 雪の宿 昨日の晩まであんたとあたしあかの他人の男と女つらい世間に愛想が尽きてこの世の向こう恋の道行きあゝお人よしにもほどがあるけどあんたのその瞳(め)にほだされて馬…
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待ちわびて – 大石まどか
日暮れ 五月雨 宵化粧おんな ひとりの やるせなさ徒な浮世の 流行り歌行くひと 來るひと 來ないひと待ちわびて 待ちわびて二年二か月 待ちわびて逢いに行きたい 行かれないあのひと 遥かな 旅の空生きているやら あぁ いないやら 宵の 梅雨空 おぼろ月お酒 飲んでも 気は晴れぬ徒な浮世の 戯れうたか愛しい 恋しい 憎らしい待ちわびて 待ちわびて寒い ひとり寝 慣れたけど心の糸が 切れそうで辛くなるの…
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北みなと – 大石まどか
霧笛浅ばし 待ってる女岬にぽつり 灯がともる連絡船(ふね)が着いても 帰って来ないわるい噂に 負けそうなやせたおんなを 打つみぞれむずかる山背の 北みなと 今じゃさびれた 漁場はさむい男にとって 間違いの恋に女は 命を削るあんた生まれた 町だもの夜になったら 出て行くわいさり火海鳴り 止めないで 霧笛なくから 私も泣けるこの冬越せば 春も来る夏の陽なかを 焦がれて鳴いた蝉も抜け殻 のこすのに生きた…
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遠灯り – 大石まどか
風がひゅるひゅる 凍える胸になじみの船宿 たずねてひとり窓の向こうはけむる吹雪の 日本海岬のはずれに 遠灯りつらく つらくはないの…お前は孤独に 耐えてゆけるのね 嘘は男の 優しさだけど許してみたって 傷つく女愛に疲れて愚痴も途切れた 旅の宿飲まなきゃ夜明けが 遅すぎるお酒 お酒が欲しい…お前と仲良し 飲んでねむるまで 過ぎてしまえば いゝ事ばかりやっぱり私は あなたの女待てば痩せます負けた未練の…
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燃ゆる想い – 大石まどか
一日あわねば 千日の燃ゆる想いの 胸の火よさだめに抗(あらが)う 恋ゆえにこゝろ細れど 身は焦がれあゝ 爪の先まで 火照ります… ひと夜の逢瀬が 生きがいのかたい契りの 紅い糸どんなにたしかな 結びめも泣けば千切れる 紙の糸あゝ 未練ばかりが あとをひく… つれない仕草が なおさらに燃ゆる想いを つのらせる夢路に誘(いざな)う やわ肌に恋の炎が またひとつあゝ おんな心に 火をともす… 人気の新着…
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ナミダワスレ – 大石まどか
涙を忘れていいのここからまたふたり離れていたさみしさに咲いた花を 枯らさないで あのとき最後と 決めてたくちづけひとつ傘 忍んで 雨が泣いていたどこかで幸せさえ 信じきれなくてでもね 他に行くとこあるはずないと覚悟もした 涙は忘れていいのこれからまだふたり心がただ言うままに夢の続きたどりながら 指輪が欲しいと きっと迷わせた掛け違うボタンは いつも愛のせい誰にも頼らないで 生きる道もあるでもね ひ…
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シングル・アゲイン – 大石まどか
あなたを連れ去るあの女性(ひと)の影に怯えて暮らした日々はもう遠い離れてしまえば薄れゆく記憶愛していたのかも思い出せないほどよ また独りに返ったと風の便りに聞いてから忘れかけた想いが胸の中でざわめく 私と同じ痛みをあなたも感じてるなら電話ぐらいくれてもいいのに変わり続けてく街並のようにもとには戻れない若き日のふたり彼女を選んだ理由(わけ)さえ聞けずにただ季節は流れ見失った約束もし再び出会って瞳を探…
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茜の炎 – 大石まどか
今さら恋なんていらないと思ってた黄昏が近付く街であなたに出逢うまで 傷ついた記憶が静かに溶ける優しい腕に抱かれるたびに過ぎてしまった時間(とき)をいたずらに数えあきらめたふりをして生きてきたけど 素肌這うぬくもりが運命を変えてく 心でゆらり ゆらり茜の炎まるで命を彩るように一途にゆらり こんなふうに誰かを愛せることが嬉しくて 一人で生きてゆく そう決めたはずなのに絡ませた指先になぜ 涙がこぼれてる…
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曼珠沙華が咲いた – 大石まどか
曼珠沙華が咲いた別れのバルコニーまっ赤な悲しみがゆらゆら燃える最後の女だと口説かれたあの夜明日(あす)が欲しくてしがみついたの……行かないで 行かないで服を脱がせたままで返らない 返らないあなたに捧げる前の私のきれいなからだ…… あなたに染められてもらったよろこびは汚(けが)れた偽りのしあわせだった女な抱かれると勘違いするのねそれは愛だと 愛されてると……行かないで 行かないで私泣かせたままで棄て…
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京都みれん – 大石まどか
あなたひとりの わたしになれるそんな倖(しあわ)せ 夢見てた五山送り火 あかあかと今も燃えます この胸でせめて せめて せめて こころだけ抱いて下さい 未練の炎(ほのお) 橋のたもとで 来ぬ人待てば京の霧雨 こぬか雨加茂の流れに この恋をそっと流して 泣きましたあなた あなた あなた 憎みます憎みきれない 未練が憎い 雪の比叡の 冷たさよりも逢えぬさびしさ 身を縛(しば)るとうに忘れた 恋ですとい…