大江裕
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十勝秋冬 – 大江裕
十勝平野に 雪虫舞えば秋を急(せ)かして 冬がくる親父がわりに おふくろを守ってささえて 生きているここがふるさと 日高のふもと北の大地が 宝物 辛い時ほど 笑っていろと酔えば親父に 聞かされた星が輝く 寒い夜(よる)今でも聞こえる あの声がみんな元気だ 心配するな暖炉(だんろ)囲んで 夜が更ける 十勝平野は 雪また雪よ春はいつくる いつ巡る花の都会(みやこ)に 出てみたが戻っていつしか もう五年…
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北の縄のれん – 大江裕
胸の芯まで 凍える夜も暖簾(のれん)くぐれば 暖かいなんにも云うなよ 苦労の文字をやせた背中に 背負(しょ)っている似た者同士さ 俺たちはさしつさされつ 北の縄のれん すすで汚れた 天井(てんじょう)見れば思い出すのさ ふるさとをおふくろ達者か 変わりはないかたまにゃ聞きたい あの声を今年の暮れには 帰ろうか風が啼いてる 北の縄のれん 古いラジオに 流れるギターあれは昭和の 流行歌(はやりうた)も…
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さいはて浪漫 – 大江裕
夕陽に染まる 雪の羅臼岳(らうす)よハマナスゆれてる 斜里(しゃり)の浜ひとり寂しさ 鞄に詰めて遥か知床 オホーツク遠く別れた あのひとがなぜだか揺らす この胸を熱くよみがえる 愛しさを抱いて 抱いて眠ろう 北の果て 人恋しさを くべる暖炉の炎に浮かぶは サハリンか宗谷岬に 銀河は流れ夜も深まる 稚内いつか忘れた あの夢が今夜はこころ 誘うのさふいに湧き上がる ときめきを抱いて 抱いて眠ろう 北の…
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北海ながれ歌 – 大江裕
雪のすだれの 向こうにひとつ赤い提灯 淋しく揺れている女将さん まずは頼むよ熱い酒酔えばあいつの 呼ぶ声が北の夜空で 風に舞う小樽 札幌 男のながれ歌 惚れているのに 背中を向けりゃ胸も凍えて ぬくもり恋しがる幸せに なってくれよと詫びながら今日も列車を 乗り継げば北の夜空に 鳴く汽笛釧路 帯広 男のながれ歌 いつかあいつを 会わせたかったどこか笑顔が 似ていたおふくろに…今さらに 悔む重ねた親不…
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太陽のカーニバル – 大江裕
太陽 sun sun sun 心に浴びて… 地球のどこかでいまも 〈いまも〉太陽のカーニバル涙のあとにはきっと 〈きっと〉笑顔咲き誇るから白い雲に ため息も不安もどこか遠く乗せて 飛んで行けばいいね太陽 sun sun sun 心に浴びて 嵐もいつかは過ぎて 〈過ぎて〉太陽のカーニバル大人も子供もみんな 〈みんな〉はしゃぎ踊り出すから胸に描(えが)く 未来図も希望も熱い想い抱(いだ)けば きっと叶…
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ゆたかの感謝節 – 大江裕
西に向かってありがとう東に向かってありがとう… 今日も多くの 皆々様に聞いていただく この歌は師匠ゆずりの 節回しなんにも分からぬ 若輩者(じゃくはいもの)をよくぞ育てて くださいました恐れ入ります ありがとう感謝感激 感謝節 我は我なり この世にひとり天の恵みか この命きっと大事に いたします人生苦労は つきものだから人の情けが なおさら沁みる恐れ入ります ありがとう感謝感激 感謝節 北に向かっ…
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高山の女よ – 大江裕
誰を恋(こ)うのか 夜風にゆれて祭り屋台に 灯がともる旅の仮寝の 深情け 深情けすがって泣いた いとしい女(ひと)よ飛騨路 高山 春おぼろ 春おぼろ 燃えてどうなる どうにもならぬ明日(あす)の見えない ふたりには遠く聞こえる 笛の音(ね)が 笛の音が吐息のように 心にしみる飛騨路 高山 夜半(よわ)の月 夜半の月 秋にもいちど 逢えたらいいと細い小指を からませる泣いてかくれた 出格子に 出格子…
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時代の海 – 大江裕
親という名の お守り抱いて人は世間に 船出する辛い時でも 笑顔で受けて耐えて行くのも 男じゃないか人生海峡 アァアー(アーヨイショ)乗り越えて 修行重ねて いくとせ過ぎた熱い想いを 大切に涙隠して 頑張り通すそんな姿も 男じゃないか人生海峡 アァアー(アーヨイショ)乗り越えて 決めたからには 時代の海を渡りきるのさ 迷わずに夢じゃないのさ 願いは叶う真(まこと)信じて 男じゃないか人生海峡 アァア…
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城崎しぐれ月 – 大江裕
ちぎれた縁(えにし)の 細糸をひとり手繰(たぐ)って 丹後を越えた忘れられない うなじの白さ湯の香恋しい 城崎はあの日と同(おんな)じ しぐれ月 あなたの知らない 傷ばかりどうか忘れて 欲しいと泣いた摘んで帰れぬ いで湯の花よ何処にいるのか あの女(ひと)の吐息のような しぐれ月 かなわぬ願いの 儚(はかな)さを知って揺れるか 川端柳逢えるものなら 夢でもいいと思慕(おも)いつなげる 城崎は未練に…
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山 – 大江裕
流れる雲の 移り気よりも動かぬ山の 雪化粧ガンコ印(じるし)の 野良着(のらぎ)をまとい生きる師匠(おやじ)の 横顔におれは男の 山をみたおれもなりたい 山をみた けわしい山に 登ってみたい自分の道を 極めたいそれは男の 見果てぬ夢か山に登れば その山の山の向こうに 待っている山の深さを 知るばかり 目先のことに うろちょろするな昨日(きのう)と同じ 今日(きょう)はないそれが師匠(おやじ)の 口…