千葉一夫
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渚にひとり – 千葉一夫
渚にひとりで 佇む影が沈む夕日に 消えてゆく潮の香りが 愛しい日々の遙かな思い出 連れてくるああ…あなた今でも今でも憶えていますかふたり倖せ 祈るよに黙って見ていた 遠花火 遠花火 渚を辿れば 海面(うなも)を照らす月の光が ひとすじにあの日浜辺で 肩寄せ合ってラジオで聞いてた 流行歌(はやりうた)ああ…あなた今でも今でも憶えていますか胸を焦がした 青春のふたりで唄った あの歌を あの歌を ああ……
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りんどうの花咲くころ – 千葉一夫
都会の風に 晒されながら夢を追いかけ 幾歳(いくとせ)すぎたやさしくこの俺 いたわるようにこころに浮かぶ あのふるさとはりんどうの りんどうの花の咲く町よ おまえがくれた ふるさと便り待っていますと ちいさな文字がふたりで歩いた 白樺ばやし忘れはしない あの日のことはりんどうの りんどうの花の咲く丘を 旅立つ朝の 約束だけは胸にしっかり 抱きしめて来たかならず帰るよ 今年の秋はおまえの好きな 薄む…
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山吹の駅 – 千葉一夫
冷えた手をとる 別れのホームお前は寂しさ 隠すよに情けが深い 証拠よとお道化た仕草の いじらしさ朝日差し込む 線路脇蕾まだらな 山吹の駅 夢を追ってる あなたが好きよ思いの通りに 生きてねと心の絆 愛おしさ優しいぬくもり 離さない途中下車した 夕間暮れ揺れる面影 山吹の駅 やっと出逢えた 陽だまりだから死ぬまでふたりさ これからは命を重ね 暮らそうな待たせた分だけ 幸せを花はそろそろ 咲く頃か明日…
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男新三流れ旅 – 千葉一夫
人の情けに 逆らいながら拗ねて歩いた 三年三月何を迷うか 気のむくままに縞の合羽に 風が吹く明日は馬籠(まごめ)か妻籠(つまご)の宿か男新三(おとこしんざ)の 男新三のながれ旅 雁が鳴いてる 峠の里はいろり煙が 霞んで消える叱るお袋 瞼に浮かぶおちば絡むぜ わらじひも明日は寝覚床(ねざめ)か 木曽桟(きそかけはし)か男新三の 男新三の流れ旅 木曽の名代の 御嶽山は俺を待ってる 十六夜月(いざよいづ…
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男のみれん – 千葉一夫
港しぐれが 降る夜は遠いお前の横顔泣き顔思い出す涙ぐらしを させたね俺のわがまま 身勝手さ夜更け寂しい こんな夜は酒に詫びてる 男のみれん 北のはずれの 港町頬を切るよな冷たい凍てつく風が吹くひとり泣きして いないかうすいお前の その肩を抱いてやりたい こんな夜は酒の苦さは 男のみれん 手書き便箋 ひと文字も残せないまま 北行き列車に飛び乗ったすがるお前の その目が今も心を 離れない港灯りが しみ…
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連理の花 – 千葉一夫
ついておいでよ はぐれぬように過ぎた昨日は 振り向かないで日暮れ淋しい 北風道をひとり歩いて 来たんだね今日を限りに 泣かせはしないふたり咲かそう 連理の花を 薄い日差しの この街だけどここで暮らすと つぶやくおまえ俺とおまえは ふたりでひとり何も言うなよ 目でわかる同じ傷みを 分け合いながら花を咲かそう 連理の枝に 雨の降る日は 相合傘で晴れを待とうよ 肩寄せ合って雨も上がれば 七色虹が明日の倖…
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いつか再会たら – 千葉一夫
君を傷つけた この俺だけど今はとても悔んでいるんだ何故か今夜は 酔えなくていつもの店で ひとり飲む忘れられない あの日の君は小雨の中にたたずんでふるえていたね 遠くで霧笛が 哭いているようなそんなせつない夜が身をせめるいつかひとりで 彷徨(さまよ)えば見上げる空に 流れ星あれは夢だろか 遠いまぼろし胸の隙間にしみてくる夜更けの風よ 二人暮した この都会(まち)に季節の花が 風に舞ういつか再会(あえ…
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出雲路ひとり – 千葉一夫
独り旅なら 気兼ねもなしに松江 椿の 城下町水の都の 風なつかしく男の錆を 洗うよにしとしと降る雨 縁雫(えにしずく)さすらいの…さすらいの出雲路ひとり 潮の香りを 背にうけながら歩く宍道湖(しんじこ) 旅のやどしじみ獲りする 朝もやの中長竿じょれん 青墨絵夕日は茜々(あかあか) 影染めてさすらいの…さすらいの出雲路ひとり 島根半島 この目に焼いて右に夕凪 日本海心ぬくめる 出雲の祈り一畑(いちば…
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望郷津軽 – 千葉一夫
ナラ枯れの 山間(やまあい)に汽笛を一つ おいてゆく津軽地吹雪 地を這(は)う夜はバチを叩けば 三味が鳴くいまも逢いたい 人がいるイヤー イデヤ ヤーイー 望郷津軽 結びあう 指と指かならず帰る 故郷へ津軽訛りを おり込む節(ふし)が忘れられない 今もなお山が閉まれば 冬支度イヤー イデヤ ヤーイー 望郷よされ 冬ざれの 岩木川涙をのんだ いく曲がり雪がふるふる 季節が止まるあなたあなたに 逢えた…
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さくら路 – 千葉一夫
二人の行く手を 遮(さえぎ)るように桜の花びら 舞い落ちるいつか噂に なった恋二度とは戻れぬ ふるさとよ肩を優しく 抱き寄せるおまえと おまえと 離れずに 世間の風さえ 冷たく沁みる悔やんでいないか この恋を俺と出会って いなければ普通の暮らしが あったのに詫びて足りない 今さらにおまえと おまえと どこまでも 舞い散る花びら 両手で受けて微笑むおまえの いじらしさそっと身を寄せ 二人して暮らせる…