すぎもとまさと
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TATSUYA – すぎもとまさと
中学二年の お母ちゃんの傷口(きず)から生まれた 私(うち)やもんそうやアンタに 会えるまで男をにくんで 生きてきた竜也 竜也 どうして どうして 私(うち)ひとり竜也 竜也 残して 残して 逝ったんよ後を追いたい… 追いたいけれどおなかのこの児(こ)が 動くんよ アンタを殺した オートバイが今夜も街中 暴れとる私(うち)はあの爆音(おと) 聴くたびに憎しみばかりが 逆巻(さかま)くよ竜也 竜也 …
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なぎさ橋から – すぎもとまさと
情けないわね ふたりともハーフワインで こんなに酔って嬉しかったわ 今夜のお酒あなたはちっとも 変わってなくてやさしくて ああ 冷たくていとしくて 憎たらしくて…歩きましょうか なぎさ橋まであのバスストップあなたは駅に わたしは家(いえ)に 漁り火ほらね ちらちらと夜風にまたたく なつかしいわね今度会うまで 元気でいてよ本当だからね 指切りしてよ苦しくて ああ せつなくてなのにあなたが 忘れられず…
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昭和縄のれん – すぎもとまさと
ひなびた路地の 縄のれん焼鳥は世間のすみで 味わうものと酸(す)いも甘(あま)いも かみわけた父のこだわり いまわかる 酒とおんなは 二合<号>まで愚(ぐ)にもつかない 冗談云って酔えばときどき 笑いとり手酌(てじゃく)のすきな 父でした ひとのじゃまにならぬようひとをおしのけ生きぬよう努(つと)めてがんこを よそおったそんな父が いまもしずかに飲んでいそうな 縄のれん はたらきながら いやなこと…
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夜桜蝶々 – すぎもとまさと
十五で覚えた ため息は二十歳のときに 捨てました悲しすぎると 泣けないと知った二十五 夜明け前 大人になったら 汚れると子供の頃は 思ってた三十過ぎて 欲しいのは純愛だけに なりました 夜桜蝶々 飛んでゆけあなたのもとへ 飛んでゆけ闇に咲いても 花は花罪なさだめも 恋は恋Ah Ah Ah …… 泣かない女が 泣くときは愛するひとの 腕の中たった一つの 幸せで百の不幸も 消えてゆく 大きな桜の その…
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落花生~らっかせい~ – すぎもとまさと
親父が好きだった 落花生が今年も 店先に並んだいつも茶の間で むいた殻ちらかしてお袋が 怒ってたっけ生まれた家も とうに売り払い故郷は いつの間にか遠くて墓参りなんて 何年ぶりなんだろ花を買うよな 柄でもないし落花生と 缶ビールふたあけて小さな 墓に置いた乾杯しようか 俺も飲もうふいに落ちた この涙乾杯しようか 空が青いやっと素直になれた 遅すぎるよね 老人ホーム(ホーム)のお袋は 落花生を渡すと…
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お久しぶりね – すぎもとまさと
お久しぶりね あなたに会うなんてあれから何年経ったのかしら少しは私も 大人になったでしょうあなたはいい人 できたでしょうね お茶だけのつもりが時のたつのも忘れさせ別れづらくなりそうでなんだかこわい それじゃ さよなら 元気でと冷たく背中を向けたけど今でもほんとは 好きなのとつぶやいてみる もう一度 もう一度 生まれ変わってもう一度 もう一度 めぐり逢いたいね お久しぶりね こんな真夜中にあなたから…
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白木蓮 – すぎもとまさと
新宿発の 特急あずさ 独(ひと)り下りれば木蓮の蕾(つぼみ)が仄(ほの)かに 香り出す頃…お寺へつづく 花輪の列の 数の多さが故郷(ふるさと)に尽くしたあなたを 悼(いた)む声です…驚かないでください 音沙汰なしの私が来て父は娘が苦手だった 娘は父を鬼と恐れた愛など疎(おろ)か 終日(ひもすがら)、刃(やいば)を胸に息もできない 親子でしたね阿弥陀仏 波阿弥陀仏相性(あいしょう)だけは 仕方ない葬…
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土砂降りの雨だから – すぎもとまさと
土砂降りの雨だから もういいよこの傘をあげるから ふりむかないで昔の人だと知ってたよ揺れてたこともね愛してる だからこそさよなら…あげるよ不思議だね 明日から他人になるなんて心まで ずぶ濡れて 夜空を見上げてる 土砂降りの雨だけど まにあうさこの腕をほどくから ふりむかないであんたの髪の毛その服も濡れないようにねくずれそう それでもねすがりはしないよ…大丈夫 あたしなど忘れていいんだよ夜の街 ずぶ…
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囁きの海 – すぎもとまさと
年の差が 親子ほどそれも 歯止めにならなくて他人(ひと)の目を避けてアパートをかってに借りて実家(いえ)を出た真夏(なつ)の海 ただ激しく迸(ほとばし)る愛に流れ黄昏の靴音を待ちわびて しがみついた夕月も見ず 潮騒の音にも耳を貸さず… 三度目の春がゆき濡れた季節のささやきに毎日が愛し合うことと別れ話の繰り返し走水(はしりみず) 眩(くら)むような陽炎(かげろう)が燃えたつ朝なぜかしら もう二度と逢…
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昭和最後の秋のこと – すぎもとまさと
貧しさもつらくない 四畳半にも夢がある嘘をつかない約束で 肌を寄せあう二人なら 死にましょうか 生きましょうか生きましょう 生きましょう互いに巡り会えただけ この世の神に感謝して 昭和最後の秋のこと 雨にうたれる彼岸花震える愛が 震える愛がまだあった 飢えた日を忘れない 痩せて目だけをひからせたそんな時代の子であれば 心だけでも満たしたい 死にましょうか 生きましょうか生きましょう 生きましょう笑…