綾世一美

みちのく挽歌 – 綾世一美

吹雪まじりに 汽笛が鳴いて
ふっとあんたの 面影が
くもりガラスの 窓に映って
長い冬です 寒い肌
ハアー 夢でも 逢いたいよ
ハアー 夢でも 抱いとくれ
恋しさつのって ひとり泣く

山の根雪が 溶け出す頃は
花も咲かせる 風も吹く
鳴瀬の川に あんたの名前
呼んでみました 淋しくて
ハアー 幼児のしぐさもよ
ハアー あんたに似てくるよ
季節の変りを 何度見る

ハアー 夢でも 逢いたいよ
ハアー 夢でも 抱いとくれ
涙のみちのく 冬挽歌

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出世桜 – 綾世一美

七つ転んで 八つも泣いてそれでも転げろ 何度でも苦労を山と つみ上げていつか見おろす 花になれ出世桜は 男の華だ人を恨むな グチグチ云うな大きな器で 酒を飲め勝

望郷おとこ節 – 綾世一美

五臓六腑に沁みわたる今夜のお神酒は ひとあれしそう独り今ごろ玄海灘が木っぱ小舟をあやつっておやじ…まるめたまるめた背中が目に浮かぶハァ 俺も東京で闇ん中アアア 

若狭の春 – 綾世一美

雨の棧橋 人もなく心細げに 船が出る明日のわたしを 見ているようで汽笛も寒い… 若狭の春よ肩がしあわせ あきらめて胸があなたを 恋しがる明日のつづきを せがみは

能登の海 – 綾世一美

岬おろしが 肌を刺す霙まじりの 能登の海沖で群れ飛ぶ 鴎さえ話相手が あるものをなぜに なぜに なぜに なぜにひきさくの恋の運命の 哀しさよ道をたずねる 人もな

音無川 – 綾世一美

桜の蕾が 淡雪とかし空に咲く日も あとわずか町を流れる 音無川の岸にたたずみ 灯をともす赤提灯の おんなにも聞かせてください 春の音小さな坂道 つまずきながら生

陽炎 – 綾世一美

しずく哀しいかかり湯を何度も浴びて髪を梳くあなたの匂いは取れたでしょうか北のはずれの湯の宿は窓の下まで 日本海ひとり枕で 眠るのに温もりさがす 手が憎いあなたと

霞見坂 – 綾世一美

墨絵ぼかしの 町並暮れてお店に憂き世の 灯がともる路地のにぎわい 行き交う声に止める菜刃が 未練です寂しくて 逢いたくて あなたを呼べばこころ乱れる…霞見坂つの

木屋町の女 – 綾世一美

傘のしずくを 目で追いながらまわす未練の 糸車雨の木屋町 紅殻格子 紅殻格子口じゃきれいに 別れた筈の夢がせつない 高瀬川濡れた袂を情けでしぼりわざとくずした水

丹波越え – 綾世一美

恋に逃れて 行くことを京都では丹波越えと言うのですあなたと二人のみちゆきで本当は越えて みたかった空蝉の この世の旅に花を散らして 風が立つ胸の残り火 消えるま

海峡駅 – 綾世一美

好きで 好きで 好きで 好きで好きで別れた人だからきっといつかは逢えるはず波また波の海峡駅はかもめ啼くから雪になる寒い 寒いわあなた抱きしめて…呼んで 呼んで 

哀愁岬 – 綾世一美

白い灯台 誰を待つ海鳴りばかりが わたしをせめるあなたお願い 帰ってきてよ死んでも死ねない 恋もあるのよ北に 北に 咲く花 命がけ野付トドラウ 打瀬舟(うたせぶ

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